副業:間借りカレー屋

日本で激レアな東南アジア系カレーを提供する間借りカレー店のブログです

それ、本当にバターチキンですか?

あるたまです。

2月にフードアナリストの試験に合格し、

フードアナリスト3級になりました。

 

なので、食に関する正しい知識を、

さらにアウトプットしていきたいと思います。

 

 

で、表題。

みんな大好きなバターチキン。

 

インドカレーというとだいたい思考停止で

バターチキンとナン

を思い浮かべる方が本当に多いです。

 

で、みんな大好きなバターチキンですが、

あなたが食べているバターチキンは

本当にバターチキンですか?

 

 

さらに、もうひとつ質問です。

 

そもそもの話、バターチキンって

どんなカレーのことですか?

ルーツも踏まえて答えてください。

 

どんなカレー?ルーツ?

そりゃ、バターの入ったチキンカレーでしょ?

 

うーん、半分正解。

 

え?違うの?

ってほとんどの人が思うはずです。

 

そうなんです。

本当の「バターチキン」というものは

ただ「バターの入ったチキンカレー」では

実は不十分なんです。

 

今の日本に出回っているバターチキン には

おおまかに3種類あります。

 

1つめは本物のバターチキン、

2つめはニアイコールなバターチキンカレー、

3つめはただのバター入りチキンカレー、

です。

 

では、ひとつずつ紐解いていきましょうか。

 

【本物のバターチキン】

北インドのがイギリス統治下にあった時代に

イカーストが食べていたとされているもの。

現地での名称は「ムルグマカニ」。

 

ムルグマカニは、タンドリーチキンをベースに

バターと生クリーム、トマトやカシューナッツ

が入ったもの。

 

つまり、タンドリーチキン特有のスモーキーな

フレーバーがグレイビーに含まれていないと、

本当のバターチキンとは言えないわけです。

 

 

ですが、ルーツを踏まえたバターチキンを

出せているお店って実は1割にも満たないんです。

 

タンドール自体が非常に高価なインフラのため

富裕層しか所有できない調理器具なので、

結果的にバターチキンがハイカーストに限られた

贅沢な高級料理だったということが分かります。

 

また、ルーツ的にはバターチキンは

そもそもカレーではない

という一説もあります。

 

さぁ、あなたが食べたバターチキンは、

スモーキーなグレイビーでしたか?

 

 

【ニアイコールなバターチキン】

さすがに手間もコストもかかるので、普段から

手軽に食べられないムルグマカニなので、

タンドールで炙った骨無し鶏肉(チキンティッカ)や

炙りすらもしない鶏肉が入ってたりします。

 

この辺は都内のインネパ系あたりに端を発し

日本に広く定着しているタイプの

バターチキンではないかと思われます。

 

ジャパニーズドリームで一旗あげて仕送りすべく、

就労ビザ欲しさにネパール人が特定技能として

タンドール職人としてタンドールブローカーの

口車に乗せられて日本にきたのがインネパ系です。

(言い方…w)

 

タンドールも使えるのでナンも焼けたりするわけで、

だから日本で甘いバターチキンとふわっと白くて

柔らかいナンが女の子にウケてしまったので、

インドカレー=バターチキンとナン

という短絡がここで完成されたわけです。

 

余談ですが、前述したとおり、タンドール

高価なインフラなので。実際にインドでは

ナンなんて基本的に食べないんです。

 

正確には「食べられない」んです。

 

さらに言っちゃうと、「インド」で一括りに

するなって思っちゃいますね。

 

日本の東北地方や近畿地方みたいに、

インドにも東西南北があって、

それぞれで展開される食文化は異なります。

 

北インドは酪農+小麦粉の文化、

南インドはコメ+野菜の文化。

 

なので、食べるものが根本的に違うので、

バターチキンを簡単に「インドカレー」と

言うのは間違いだということです。

 

 

【バター入りチキンカレー】

いちばん厄介なのがこれ。

 

いわゆる間借りとかカフェ系に多い

「私が考えたバターチキン」的な、

スパイスカレーに成り下がったカレーです。

 

かなり辛辣なキツい表現となりますが、

ルーツを無視して造詣を深めることもない、

北インドの片鱗すらないカレーです。

 

イギリス由来の欧風カレーで感覚的に

「カレーに乳製品を入れると旨い」という

作り手側の隠し味的TIPSだったものを

臆面もなく前面に出したのがこれです。

 

カレー右翼…もといカレー原理主義者には

旨いと思えても、「印象に残る本当に旨い」

とは決して思わないカレーなんですね、

こういうのって。

 

間借り営業のブーム化によるカレー屋の

参入障壁は相当低くなりました。

 

ですが、その反面で各メニューのルーツとか

2種盛り等の複数種盛りの組み合わせにおける

「何故それを入れるのか」という理由や必然性が

非常に曖昧になってるのが現状です。

 

カレー自体にそれらのreasonがないから、

複数を組み合わせた際の化学反応や親和性まで

深く考えられていない、印象に残らない

薄っぺらいスパイスカレーが増殖するわけです。

 

あぁ、脱線しちゃった。笑

 

ともあれ、ルーツ皆無のバター入りチキンカレーを

バターチキンと呼ぶのが一般的になってしまい、

誰もそこに疑問にする感じていないんですね。

 

 

どうですか?ここまで読んでみて、

今まで食べてきたバターチキンは

「これは本当にバターチキンだ!」

と自信を持って言えるものでしたか?

 

私は、基本的にバターチキンを食べません。

仮に食べる機会があるとするならば、

広く一般的に知れ渡った料理だからこそ、

本当に信頼性の高い「本物」を

食べさせてくれるお店を選びます。

 

もし違うものに出会ったときは迷いなく

「バターチキン を名乗る別物」と認識して

味わうことにしています。

 

#定義は正義 

外食するときに、実際に出てきたモノが

その料理名に本当にフィットしたものなのか、

意識したり疑問を持つようにすると、

あなたはone of themから一歩抜け出せます。

 

ラーメン発見伝」での芹沢ラーメンハゲの

ヤツらはラーメンを食ってるんじゃない。

情報を食ってるんだ

は名言であり真実です。

 

せっかく情報を食べるなら、

情報をきちんと精査して

正しい情報を食べる方がいい

と思います。

 

正解を知ることは「基準を知ること」です。

 

基準からズレたものを食べたときに

「これ間違ってるよね」と分かれば、

ニセモノが本物のフリをして出回るという

問題が回避できます。

 

 

「正しいより楽しい」なんて歌詞の歌がありますが

私は真っ向からその歌詞に反対しています。

食の「楽しい」は「正しい」の先にあるものです。